東京高等裁判所 昭和33年(ネ)674号 判決
被告控訴人らは、右和解条項一に記載されている二年の賃貸借期間は、借家法所定の事由がない限り当然更新さるべきものであるから、昭和三十二年四月末日限り右家屋を明け渡す旨の右和解条項二は借家法第六条の規定によつて無効であると主張するので考えるに、成立に争のない乙第一号証の一ないし五、同第二号証の一ないし六、甲第一、第二号証、同第五号証、原審並びに当審証人村田東太郎、原審証人安達幸衛の各証言、原審並びに当審における原告(被控訴人)合資会社宝林堂代表者鳥海治郎松尋問の結果の一部(後記信用しない部分を除く)、原審並びに当審における被告(控訴人)本人尋問の結果を綜合すれば、控訴人は昭和十九年五月三十一日訴外鳥海治郎松に対し本件家屋を賃貸したが、昭和二十三年五月賃料不払を理由として賃貸借契約を解除し、ついで昭和二十四年六月鳥海治郎松を被告として家屋明渡等請求の訴を東京地方裁判所に提起し、昭和二十六年三月十九日同裁判所において原告(本件控訴人)勝訴の判決が言い渡され、ついで右鳥海治郎松の控訴を棄却する判決、さらに同人の上告を棄却する判決がそれぞれ言い渡され、右原告(本件控訴人)勝訴の判決が確定したこと、しかるに、その間において本件家屋は本件被控訴人合資会社宝林堂、同鳥海稲子によつて占有されていることが判明したため、本件控訴人は昭和二十八年十月一日本件被控訴人合資会社宝林堂、同鳥海稲子を被告として家屋明渡等請求の訴を東京地方裁判所に提起し、同裁判所昭和二八年(ワ)第八、五二四号事件として審理中、昭和三十年四月下旬村田東太郎が裁判外において本件当事者の間に示談をあつせんしたところ、本件控訴人は可及的速かに本件家屋の明渡を求めていたが、その後二ケ年間に限りこれを本件被控訴人宝林堂、同稲子に賃料一ケ月一万八千円で賃貸し、二ケ年の賃貸期間経過後本件家屋を控訴人に、明け渡すという了解が成立し、右当事者間の了解に基いて昭和三十年七月十九日前段認定の如く賃貸期間を二年に限定して裁判上の和解が成立したことを認めることができる。原審並びに当審における原告(被控訴人)合資会社宝林堂代表者鳥海治郎松尋問の結果中右認定に反する部分は信用しない。その他右認定を覆すに足る証拠はない。以上の認定によれば、控訴人と本来の賃借人である訴外鳥海治郎松との間においては本件家屋の明渡を命ずる判決が確定しており、控訴人はさらに、その間に判明した本件家屋の占有者である被控訴人合資会社宝林堂、同稲子に対して本件家屋明渡の訴を再び提起して訴訟進行中、当事者間に裁判上の和解が成立し、控訴人は可及的に速かな明渡を希望しつつも期間を二年と限定してこれを賃貸すると共に、被控訴人をして右賃貸期間終了により本件家屋を明け渡すことを確約せしめたものと認められ、従つて該賃貸借は永続的な賃貸借関係を設定するものでないことが明らかであるから借家法第八条にいわゆる一時使用の為の建物の賃貸借と解することが相当である。そうすれば、右賃貸借については借家法の適用がないものというべく、前段認定の和解条項が借家法第六条によつて無効であるとする被控訴人らの主張は理由がない。
(松田 猪俣 沖野)